洋楽と邦楽(J-POP)の違いって何?

Pocket

こんにちは、ヴォーカリストのabbie k.(アビー・ケイ)です。

洋楽が好きで聴いている方、または自分で洋楽を演奏される方なら、きっと一度は「洋楽と邦楽の違いって何?」って気になったことがありますよね。

私自身も、日本人である自分が、洋楽のカバーをする上で常にこの問いを持ち続けてきました。

英語で歌いさえすれば、洋楽になるんじゃないの?と思われる方もいるでしょうが、残念ながら、単なる言語以外の違いが多くあります。

昔から洋楽が好きで長年聴いてきましたが、日本で生まれ育った私には、知らず知らずの間に、邦楽の文化が色濃く刷り込まれています。

その為いくら英語で歌ったとしても、原曲の洋楽が持つフィーリングからずれたものが出来上がってしまうのです。

英語の発音自体の違いもありますが、それ以外の違いとは何なのか。私なりに模索したり、レッスンで先生にアドバイスを頂いた結果、いくつかポイントが見えてきました。

そこで今回は、私がヴォーカリストの視点から考える、洋楽と邦楽の違いについてお届けします。

※ここで言う洋楽とは、主に英語圏の、ロックやポップス、ジャズ等の大衆音楽の総称であり、邦楽とは、日本の、ロックやポップス(J-POP)等の大衆音楽の総称を指しています。

歌い方の違い


まず初めに挙げられるのは、歌い方の違いでしょう。これは私が考えるに、洋楽・邦楽の違いというより、世界中を比較してみても、いわゆるJ-POPの歌い方にある種独特なスタイルがあると思います。

その特徴は、一音一音の頭をしゃくること。しゃくりとは日本の音楽用語ですが、音程を下から上にずり上げることを意味します。

一番例として分かりやすいのは、浜崎あゆみさんです。彼女の歌い方をよく聞くと、一音一音の頭がほとんど、まっすぐに入らずに、下から上に上がるような歌い方をしているのが分かると思います。

浜崎あゆみさんに限らず、日本のロックバンド、アニソン、昭和や平成のアイドル達の多くもこの特徴を持っています。

しゃくりとは本来、歌の中のここぞというところにスポット的に使用されるテクニックですが、J-POPの特徴として、これが多用されていることが挙げられます。

これはテクニックとして意図的に使用されているのではなく、むしろクセの様なものではないかと推測されます。

一方洋楽ではこう言った特徴はなく、一音一音の頭は、本来の音を素直にまっすぐ出します。部分的にしゃくる事はありますが、多用することはありません。

また、ビブラートに関しても違いがあります。

邦楽ではフレーズの最後をすぱっと切ることはあまり好まれず、細かなビブラートで処理することが多い印象があります。

ですが、これもしゃくり同様、意図的なテクニックとして使用されているのではなく、歌い方のクセに近いでしょう。
一方洋楽では、意図的な大きくはっきりしたビブラート以外は、細かなビブラートを多用することはなく、フレーズの最後を比較的クリアに切ります。

声質の違い

これは国ごとの好みの問題と日本人と欧米人の骨格や声帯の違いに関係してきます。

女性ヴォーカルに特に顕著ですが、日本で比較的好まれるのは、澄んだ透明感のある、いわゆる“きれいな声”です。またアイドルやアニソン歌手などに代表される、高くて細い“かわいい声”も好まれます。

これはまず、日本人の小さい骨格と声帯から出る声は、欧米人に比べて細く、高く、よりシャープな声になりやすいという理由があります。また、純粋でかわいいものが好まれる日本の文化的背景もあります。

一方欧米では、ゴスペルやR&Bに代表されるような、太くてストレートな“パワフルな声”、又はジャズに代表されるような、低めで、息交じりで、ハスキーな、いわゆる“雰囲気のある声”が好まれます。

欧米人の大きい骨格と声帯からは、日本人に比べて太く、響く声が出ます。また文化的に比較的成熟した雰囲気が好まれやすいという背景も関係していると思います。

リズムの違い

これが実は最も大きな違いかもしれません。

簡単に言うと、日本人の文化は、表打ち、欧米人の文化は、裏打ちです。

4拍子の曲を流して手拍子をしてくださいと言うと、多くの日本人は1拍目3拍目で手をたたき、多くの欧米人は2拍目4拍目で手をたたくということです。

これは日本人の音楽のルーツが、歌謡曲、演歌、さらにさかのぼると民謡である事から来ていると思います。

例えば盆踊りを想像するとわかりやすいです。

ドドンパドン(四分休符)ドドンパドン(四分休符)♪というリズムの中で、必ずのところで手をたたくはずです。のところでたたく人は少数派でしょう。

そして、1と3拍目にウエイトがくる表打ちと、2と4拍目にウエイトがくる裏打ちでは、同じ曲でもまったく聴こえ方が違います。

表打ちはリズムが比較的平坦で、単調な印象に聴こえ、裏打ちはリズムが立体的でグルーブ(ノリ)を感じやすいという特徴があります。

ある時、マイケル・ジャクソンの日本でのコンサートの映像を見ていたのですが、客席の雰囲気に、何とも言えない違和感を感じました。

その違和感の正体をよくよく考えてみると、マイケルのグルーブあふれるダンスナンバーに合わせて、みんな表打ちで手拍子をしていたのです(笑)。

それはまるで、盆踊りに合わせて拍子をとっているかのような、”和”の空気を醸し出していました(笑)。

しかし、かく言う私も、歌のレッスンで 「Stand by me」を歌った時、先生から「リズムが完全に表打ちになってるね」と注意されたことがある、コテコテの日本人です(笑)

ただ、近年は洋楽に触れる機会も多くなってきたため、自然に裏打ちで手をたたく人も増えてきていると思います。

洋楽は曲優先、邦楽は歌詞優先?

これも私独自の意見ですが、邦楽は曲よりも歌詞で個性を出す傾向が強く、洋楽は歌詞よりも曲で個性を出す傾向が強いと思います。

なぜそう感じるかと言うと、邦楽の曲の構成は、基本的に、Aメロ→Bメロ→サビを繰り返します。

Aメロは歌いだしの部分、 Bメロはちょっと曲の調子が変わってサビにつなぐ部分、 そしてサビは、一番盛り上がる部分です。

歌詞は、例えば1番、2番、3番がある場合、それぞれに違う歌詞がある事がほとんどです。

それに比べて、洋楽の曲の構成はもっと自由で、そもそもどれがサビなのか分からなかったり、サビのようなフレーズをひたすら繰り返すだけの様な曲もあります。

歌詞は、1番、2番、3番がある場合、それぞれに違う歌詞がある時もありますが、1番から3番まで、ずっと同じ歌詞を繰り返すこともあります。

邦楽はより歌詞にウエイトを置く分、曲の構成は割と型にはまっている事が多いです。

逆に洋楽は曲の構成が独創的な分、歌詞は曲ありきで、曲のグルーブを壊さないようものが後から付けられているような印象を受ける事が多いです。

それを裏付ける根拠として、日本人と日本人以外の外国人(以下、外国人)は、右脳と左脳どちらをメインに音楽を聴いているかという研究があります。

右脳は“音楽脳”とも呼ばれ、独創性や感性を司っています。

一方左脳は“言語脳”と呼ばれ、理論や常識、言語などを司ると言われています。

ここまでは日本人も外国人も全く同じです。

しかし日本人の場合、母国語である日本語は母音を多く含むという特性から、子音と母音両方を言語として認識して、左脳で処理します。

一方日本語以外の言語は、母音が比較的少なくさほど重要ではない為、外国人は、子音は言語とみなし左脳で処理しますが、母音は言語ではないとみなし、右脳で処理します。

また、「言語情報優先の原則」というものがあり、言語と言語以外の音の情報が混じっていた場合、人間の脳は言語を優先的に処理します。

すなわち日本人の場合、歌詞のない音楽の場合は右脳で聴きますが、いったん歌詞がそこに入ると、どんなノリノリの曲でも左脳で処理し、主に“言語”として聴くことになります。

結果的に日本人にとっては、歌詞が優先的に処理される為、曲よりも歌詞に力を入れた作品作りになると考えられます。

しかし外国人の場合、たとえ歌詞のある音楽でも、子音だけしか左脳で処理しない為、主に右脳で“音楽”として聴くことになります。

結果的に外国人にとっては、曲が優先的に処理される為、歌詞よりも曲により力を入れた作品作りになると考えられます。

まとめ

このように、洋楽と邦楽(J-POP)の違いは英語と日本語の違い以外に、「歌い方の違い」「声質の違い」「リズムの違い」「曲優先か、歌詞優先か」などがあると考えられます。

これは言うまでもなく、洋楽、邦楽、どちらが優れているというわけではありません。

今回この記事を書いてみて、改めて感じたのは、J-POPは世界でも独特の文化であるという点です。

「声質の違い」「リズムの違い」「曲優先か、歌詞優先か」については、他のアジア圏でも日本と同じような現象が見られることがありますが、一つ目に紹介した、「歌い方の違い」については、日本だけの文化ではないかと個人的に思います。

これらのポイントを押さえて洋楽、邦楽を聴き比べてみると、いつもと違って聴こえてくると思います。

是非、試してみてくださいね。

この記事が、何かの参考なれば嬉しいです。最後までお読みくださり、ありがとうございました!

Pocket

関連ページ