♪My foolish heart ってどんな曲?【歌詞和訳】

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こんにちは、ヴォーカリストのabbie k(アビー・ケイ)です。

ジャズのみならず、ジャンルを超えたスタンダード・ナンバーとして有名な、「My foolish heart」。

ジャズが好きな方なら、ビリー・エクスタイン(Billy Eckstine)、マーガレット・ホワイティング(Margaret Whiting)、ナット・キング・コール(Nat King Cole)など名だたる歌手に歌われてきたのはご存知のはずです。また、ビル・エバンス(Bill Evans)のピアノ演奏も有名ですよね。

そんな、今さら説明するまでもない名曲ですが、いったいどんな心情を歌った歌かご存知ですか?

私も最初は、恋に焦がれる女性の心情を描いた歌だという事くらいしか、分かっていませんでした。

しかしこの曲をカバーするにあたり、自分なりに詳しく調べて訳してみると、この曲の主人公の心模様が垣間見えて、より深く味わうことができるようになりました。

そこで今回は、私の個人的な見解による、「My foolish heart」の歌詞和訳と解説をお届けいたします。

 

オリジナルはどんな曲?

  

原曲は1949年のアメリカ映画、『愚かなり我が心』(おろかなりわがこころ (原題:My Foolish Heart)の主題歌です。作曲ヴィクター・ヤング(Victor Young)、作詞ニューリー・ワシントン(Newly Washington)、歌は当時映画で歌の吹き替えを多くしていた、マーシャ・ミアーズ(Martha Mears)。

主演はダナ・アンドリュース(Dana Andrews)とスーザン・ヘイワード(Susan Hayward)です。

ストーリーは、第二次世界大戦下のニューヨークで出会った主人公、ウォルトとエロイーズの恋物語です。

戦争により二人は引き裂かれ、ウォルトは帰らぬ人となりますが、エロイーズは未婚のまま彼の子供を身ごもってしまいます。

その後の身の振り方を考え抜いたエロイーズは、友人の恋人が自分に気がある事を利用して、その男を誘惑して結婚し、子供は彼との子であると偽って生きることを選びます。

My foolish heart はこの作品中、様々な場面で、様々なアレンジで使われています。

まずは、映画のオープニング。タイトルをバックに、舞台のニューヨークの摩天楼が登場しますが、早速そこで流れてきます。

その後も主人公の二人が初めてダンスを踊るシーンや、ウォルトがいよいよ出征する、二人にとって最後の夜のシーンでも流れています。

この作品は、主題歌ありきでヒットしたという紹介のされ方をちらほら見かけますが、私は実際に見てみて、良い映画だと思いました。

ウォルト役のダナ・アンドリュースは、すごくハンサムという訳ではないのですが、チャーミングで憎めないキャラクターに好感が持てます。

恋人のエロイーズ役のスーザン・ヘイワードも、今見てもとても美しく、魅力的です。

そして、二人とも演技が自然なので、思わずストーリーに引き込まれます。当時の戦時下の恋人たちは、寸暇を惜しんで、この様に会っていたのだと知ることができます。

歌詞和訳

※意訳ですので、あくまで個人的な見解です。また、英語と完全に一対一ではない箇所があります

“My Foolish Heart”

The night is like a lovely tune
Beware, my foolish heart
How white, the ever constant moon
Take care, my foolish heart

There’s a line between love and fascination
That’s hard to see, on an evening such as this
For they both give the very same sensation
When you’re lost in the magic of a kiss

His lips, are much too close to mine
Beware, my foolish heart
But should our eager lips combine
Then let the fire start

For this time, it isn’t fascination
Or a dream that will fade and fall apart
It’s love this time, it’s love my foolish heart
My foolish heart

For this time, it isn’t fascination
Or a dream that will fade and fall apart
It’s love this time, it’s love my foolish heart

My foolish heart
My foolish heart
Poor foolish heart

夜は素敵な音楽みたい

落ち着いて、私の流されやすい心

月はいつも白くて冷静、落ち着いてるわ

気を付けて、私の流されやすい心

本物の愛と誘惑は別物

だけどこんな夜には区別がつきにくい

どちらも同じ幸せをくれるから

キスの魔法で我を忘れてしまうと…

ああ、彼の唇が近い、近すぎる…

落ち着いて、私の流されやすい心

ああ、でも二人の唇が重なりたくてどうしようもないなら

勢いに身をゆだねて燃えるしかない

何故って、今回はただの誘惑ではないはずだから

やがて消え失せる夢でもない

愛だもの、今回は本物の愛だもの

安心してね、私の流されやすい心よ

ヴォーカリストの視点で解説

  写真:マーガレット・ホワイティング

誰かの曲をカバーする際は、まずその曲の背景や歴史、歌詞の詳細な感情表現を自分なりに調べます。

そしてその曲が描く世界やメッセージを、等身大の自分として表現するように心がけています。

この曲は、男女両方のバージョンがありますが、今回は女性バージョンで解説をしますね。

この曲の歌詞を自分で訳してみた時、まず感じたのは、時代を経た曲でありながら、何てリアルな女心を描いているのだろうという点です。リアルすぎて、自分のことを言われているかと錯覚してしまうほど(笑)

なので、第一印象としては、この曲の世界に入り込むことはそんなに難しくないと思いました。

ですが、この曲、歌詞そのままに、「きっと今回は本物の恋のはず、だから燃え上がりなさい!」と熱く歌ってしまっては、実は台無しなんですよね。

この曲のポイントは、一言で言えば、「女心の葛藤」です。

例えば以下の部分…

His lips, are much too close to mine
Beware, my foolish heart
But should our eager lips combine
Then let the fire start

His lips, are much too close to mine(ああ、彼の唇が近い、近すぎる)、 で甘い恋に流されそうになりますが…

Beware, my foolish heart(落ち着いて、私の流されやすい心) 、で少し正気に戻り…

But should our eager lips combine(ああ、でも二人の唇が重なりたくてどうしようもないなら)、でまた我を忘れそうになり…

Then let the fire start(勢いに身をゆだねて燃えるしかない)、で理性的に覚悟を決める…

どうですか?この心の揺れ動きよう(笑) まるで、一人芝居か何かを見ているようではないですか?

ついふらっと夢見心地になっては、それでは過去の失敗の繰り返しになってしまうと自制心を取り戻し、それでもまた誘惑されて心がぐらつく…という葛藤です。

まさに女性の「寄せては返す、波のような心模様」を描いています。

この波を表現するには、夢見心地の部分は情熱的に、理性が戻った部分はぐっとこらえて濃淡をつくる必要があります。

しかも過去の経験から自分を自制しようとするという事は、そんなに若くない女性なのでしょう。

若かったら疑うことなく恋に飛び込むはずですが、そうならないのは過去に苦しんだ恋のせいなんでしょうね。

そしてラストは盛り上がりますが、どこか葛藤のもやもやも晴れない感じ。でも悲しいわけではなく、今回こそきっと本物の相手であるはず…という希望のある余韻が残ります。

この曲は、10人の女性ヴォーカリストがいれば、10通りの表現があると思います。その人それぞれの記憶の引き出しから、様々な経験を引っ張り出して、それを歌に投影することでしょう。

私もこの曲ほど、過去の報われなかった恋の経験が役に立ったと思ったことはありません(笑)

そんな世代を超えて、切ない女心を思い起こさせてくれるこの曲は、だからこそ名曲なのでしょうね。

まとめ

以上が、私なりに考えるこの曲の和訳と解釈です。

映画の主題歌として誕生したこの曲は、今まで多くのアーティストに様々な形でカバーされて、スタンダード・ナンバーとして定着しました。

女性の恋心を歌った曲として知られていますが、単純に乙女が恋い焦がれている歌ではありません。

描かれているのは、少し成熟した女性の繊細な恋心の葛藤です。

女性なら誰しも、この歌詞を読めば、わかる、わかる!とうなずいてしまうはず。

そんな女心のリアリティが、時代を超えてもひしひしと伝わってくる点が、名曲と言われる所以なのでしょう。

歌詞の内容や、背景を知る前と知った後では、少し違う曲に聴こえてきませんか?

是非一度じっくり聴きなおしてみてくださいね。

そして、あなたがこの曲が気になったのは、決して偶然ではないはず。

そろそろ本物の相手に出会いたい、または、最近忘れてしまった恋心をもう一度思い出したいという気持ちが、どこかにあるのではないでしょうか?

この記事が、少しでもそんなあなたの力になれればうれしいです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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