♪At lastってどんな曲? 【歌詞和訳】

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こんにちは、ヴォーカリストのabbie k(アビー・ケイ)です。

「At last」と言えば、60年代の偉大なブルース、ソウル、R&B、ジャズシンガーだった、エタ・ジェイムズ(Etta James)を思い出す方が多いでしょう。

世代によっては、映画「ドリームガールズ」でビヨンセ(Beyoncé)が歌っているのを聴いて知った、という方もいらっしゃるでしょう。彼女はオバマ大統領就任の舞踏会でも、この曲を披露しました。

またエタ・ジェイムズを敬愛するクリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)によってもカバーされ、彼女はエタの葬儀でもこの曲を歌いました。

往年のスターから、現代のR&Bシンガーまでが、こぞってカバーするこの曲ですが、欧米ではウエディング・ソングの定番ともなっているようです。

そんな、今さら説明するまでもない名曲「At last」。いったいどんな心情を歌った歌かご存知ですか?

私も最初は漠然と、情熱的なラブソングだな、という感想しか持っていませんでした。

しかしこの曲をカバーするにあたり、自分なりに詳しく調べて訳してみると、この曲の主人公の心模様が垣間見えて、より深く味わうことができるようになりました。

そこで今回は、私の個人的な見解による、「At last」の歌詞和訳と解説をお届けいたします。

オリジナルはどんな曲?

写真左:レイ・エバリー、右:リン・バリ

初めてこの曲が世に発表されたのは、1942年のアメリカ映画、『オーケストラの妻たち』(原題:Orchestra wives)で、Mack GordonとHarry Warrenによって作詞作曲されました。

劇中では、グレン・ミラーオーケストラの演奏に合わせて、レイ・エバリー(Ray Eberle)とパット・フライデー(Pat Friday=リン・バリ(Lynn Bari)の吹き替え)が歌っています。

私もこの映画を実際観てみましたが、「At last」は主人公の男女が初めて出会う印象的なシーンで、オーケストラが演奏しています。

また、主人公二人が結婚後、気持ちのすれ違いからけんか別れしてしまいます。しかし女性が再びこの曲を街で耳にし、男性への愛情を思い出すという、劇中では重要な曲として使用されています。

ストーリーとしては、オーケストラの妻たちの日常に焦点を当てた点と、グレン・ミラー本人がバンドリーダー役で出演していること以外は、ありふれたメロドラマという印象しかありません。しかしバンドの演奏シーンは、とてもいきいきとしていて素晴らしく、非常に心に残ります。

歌詞和訳

※意訳ですので、あくまで個人的な見解です。また、英語と完全に一対一ではない箇所があります。

“At Last”

At last
My love has come along
My lonely days are over
And life is like a song

Oh yeah yeah
At last

The skies above are blue
My heart was wrapped up in clover
The night I looked at you

I found a dream, that I could speak to
A dream that I can call my own
I found a thrill to press my cheek to
A thrill that I have never known

Oh yeah yeah
You smiled, you smiled
Oh and then the spell was cast
And here we are in heaven
For you are mine…

At Last

やっと…

あの人が私のもとにやってくる

孤独な日々は終わったの

思わず歌を口ずさみたくなるわ

青空のもとに咲く

ふかふかのクローバーたちに

心が包まれているみたい

あなたに出会った夜から

私の夢、誰かに聞いてほしいの

初めて自分の夢が持てたから

誰かと頬を寄せ合うって、こんなに幸せだなんて

今まで知らなかった

あなたの笑顔に

魔法をかけられたの

二人だけの夢の世界

あなたは私のものになったのだから

やっと…

ヴォーカリストの視点で解説

 写真:エタ・ジェイムズ

誰かの曲をカバーする際は、まずその曲の背景や歴史、歌詞の詳細な感情表現を自分なりに調べます。

そしてその曲が描く世界やメッセージを、等身大の自分として表現するように心がけています。

この曲は、男女両方のバージョンがありますが、今回は女性バージョンで解説をしますね。

この曲の歌詞を訳してまず感じたのは、夢見心地の幸せな歌詞のはずなのに、どこか辛い過去を感じさせる曲だなという点です。

それは私が初めて聴いたEtta Jamesのバージョンが、ブルーノート・スケールと言う、ジャズやブルースなどで使用される音階が使用されていたから、余計そう感じたというのもあったでしょう。

そして、タイトルにもなっている、“At last”という言葉。直訳すれば「ついに」「いよいよ」のような言葉があてはまりますが、類語の“Finally”とは少しニュアンスが違います。

“Finally”は達成するまでにある程度、努力や兆戦をしてきたことをほのめしているのに対し、“At last”はその結果が起こるのを待ち遠しく思っていたことに焦点があたっています。

そうです、この女性にとっては、ずっと待ち焦がれて、やっと掴んだ幸せなのです。

今の幸せをつかむ前には、辛い恋愛もあったでしょう、孤独な日々もあったことでしょう。

それを、“At last”という言葉に込めて、恋人に向かって歌っているシーンがイメージしました。

年齢も、様々な経験を経た、ある程度大人の女性でしょうか。

または今、孤独で辛い日々の真っただ中で、ひと時その辛さから抜け出す為に、せめて空想の世界で幸せに浸って歌っているのかもしれません。

これも、余計に切ないですね。あくまで私の想像ですが。

「At last」の聴きどころは、単純に、恋が成就したばかりで、夢のような気持を歌っているだけではないところです。

この曲をカバーした様々なアーティストたちは、それぞれに、この曲の背後にある辛い過去や孤独を同時に描くことによって、より深い世界観を表現していると思います。

誰もが経験したことのある、恋の切なさと喜び両方を思い出させてくれるからこそ、現代でも多くのアーティストやファンに愛される名曲なのでしょうね。

まとめ

以上が、私なりに考えるこの曲の和訳と解釈です。

グレン・ミラー本人が出演した映画の為に作られたこの曲は、エタ・ジェイムズの代表曲として有名ですが、現在でも多くの若いR&Bシンガーにカバーされています。

この曲の主人公は、過去に恋愛で辛い経験をし、長い間、本物の出会いを夢見てきた女性。

一見、甘く幸せな歌詞ですが、その背後に恋の切なさや苦しさをどこか感じさせてくれる、深みのあるラブソングです。

上記のようなポイントを意識して聴いてみると、あなたもより深く、この曲の世界を感じる事ができるに違いありません。

是非いろんなアーティストのバージョンで聴き比べてみてくださいね。

そして、あなたがこの曲が気になったのは、決して偶然ではないはず。

久々に本物の恋がしたい、または今の相手との関係に、何か情熱が足りないなどという気持ちが、どこかにあるのではないでしょうか?

この記事が、少しでもそんなあなたの力になれればうれしいです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

追伸…

冒頭に記載したバージョン以外の、おススメをご紹介します。

少し意外なところでは、シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)、スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)、ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)。

さすが三者三様、それぞれの個性通りのアレンジに仕上がっていて、まるで違う曲のようです。

珍しいところでは、ビング・クロスビー(Bing Crosby)。彼のバージョンでは、イントロに、彼オリジナル(?)のバース(序章)がついています。

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