♪Feeling Good ってどんな曲?【歌詞和訳】

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こんにちは、ヴォーカリストのabbie k(アビー・ケイ)です。

ニーナ・シモン、マイケル・ブーブレ、ロックバンドのMuseなど様々なアーティストにカバーされているこの曲ですが、どんな心情を歌った歌かご存知ですか?

車のCMで、マイケル・ブーブレが歌っているのを聴いて知った方も多いと思います。

アカペラの歌い出しで、その後オーケストラがバン!と入る印象的なあのイントロ。何も知らずに聴くとクールでドラマチックなアレンジと、マイナーの曲調からスタイリッシュな印象を受けるので、歌詞の内容が気になりますよね。

私も最初は漠然と、かっこいい曲だなという印象しか持っていませんでした。

しかしこの曲をカバーするにあたり、自分なりに調べて訳してみると、大きく印象が変わり、この曲本来の歌心を理解する事ができました。

そこで今回は、私の個人的な見解による、「Feeling good」の歌詞和訳と解説をお届けいたします。

 

オリジナルはどんな曲?

 

原曲は1965年のイギリスの階級社会を描いたミュージカル、The Roar of Greasepaint (邦題:ドーランの叫び、観客の匂い)の為にアンソニー・ニューリー(Anthony Newley)が作詞、レスリー・ブリカス(Lesly Bricusse)が作曲を担当しました。

この曲は劇中、主役の白人男性の生き方に影響を与える脇役の黒人男性により歌われたようです。

ちなみにこのミュージカルからは他に、「Who Can I Turn To」「The Joker」など数々の名曲が誕生しました。

歌詞和訳

※意訳ですので、あくまで個人的な見解です。また、英語と完全に一対一ではない箇所があります

“Feeling Good” (Nina Simoneバージョン)

Birds flyin’ high, you know how I feel
Sun in the sky, you know how I feel
Breeze driftin’ on by, you know how I feel
It’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me
Yeah, it’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me, ooooooooh
And I’m feelin’ good

Fish in the sea, you know how I feel
River runnin’ free, you know how I feel
Blossom on the tree, you know how I feel
It’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me
And I’m feelin’ good

Dragonfly out in the sun, you know what I mean, don’t you know
Butterflies all havin’ fun, you know what I mean
Sleep in peace when day is done: that’s what I mean
And this old world is a new world and a bold world for me

Stars when you shine, you know how I feel
Scent of the pine, you know how I feel
Oh, freedom is mine, and I know how I feel
It’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me

And I’m feelin’… good

空の彼方を飛ぶ鳥たち、私の気持ちが分かるでしょ

照りつける太陽よ、分かるでしょ

やさしくそよいでくる風よ、分かるでしょ

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

最高の気分だわ

海を泳ぐ魚たちよ、聞こえている?

あてなく流れる川よ、分かってくれる?

木々に咲く花たちにも聞いてほしい

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

最高の気分だわ

照りつける太陽の下に飛んできたトンボよ、分かるでしょ

自由に飛び遊ぶ蝶たち、分かるでしょ

一日が終わる時、安心して眠れる場所、それが私の求めるもの

そしてこの古かった世界は、今や新しく生まれ変わったの

私にとって自由な世界に

星たちよ、輝くその時に、私の気持ちがわかるはず

松の香りよ、私の気持ちがわかるでしょ

そう、自由をやっと掴んだの、そしてこの気持ちをかみしめる

夜が明けて、新しい一日が始まる、私は私の人生を生きる

ずっとこの瞬間を待ってたの

 

ヴォーカリストの視点で解説

誰かの曲をカバーする際は、まずその曲の背景や歴史、歌詞の詳細な感情表現を自分なりに調べます。

そしてその曲が描く世界やメッセージを、等身大の自分として表現するように心がけています。

今回この曲をカバーするにあたり、ニーナ・シモンのバージョンを主に参考にしましたので、そちらを中心に解説しますね。

この曲の重たく、悲しい感じと、Feeling goodという明るいタイトルに違和感を感じた方は、私だけではないでしょう。

タイトルを直訳すると、「いい気分」という軽い言葉になってしまいますが、この曲を聴いたらわかる通り、そんなハッピーな雰囲気は少しもありません。

ここで言うFeeling goodとは、軽い気分の良さではなく、心の奥底から湧き出るような喜びを表現しています。そしてその喜びの背後には怒りや恨みの感情が横たわっています。

想像してみてください。例えば、無実の罪で捕らわれていた囚人が、やっと釈放され、今までの苦しみや悲しみを思い出しながら、自由な世界を勝ち取った喜びを噛みしめている時…

または、ひどい旦那との結婚生活に区切りをつけた女性が、今までの辛い体験を思い出しながら、晴れて自分の人生を歩み出すという時…

それは単純にうれしいという言葉で表現できる喜びではなく、怒りと喜びとが複雑に入り混じった感情です。

ニーナ・シモンのバージョンでは、彼女の生い立ちや当時の立場からすると、明らかに黒人差別への怒りが根底に流れる曲として表現されています。

ニーナ・シモンは、主に1950年代~70年代に活躍した黒人女性シンガーです。

ジャズ、ブルース、フォーク、ゴスペルなど、ジャンルの垣根を超えて独自のスタイルを持ったアーティストでした。

彼女自身、子供のころから当たり前に白人に虐げられる世界に育ち、クラシックのピアニストとして将来を期待されながら、黒人だという事を理由に音大への入学を断られ、ピアニストとしてのキャリアをあきらめざるを得ませんでした。

また、1960年代後半からは公民権運動に参加するようになります。しかし彼女の音楽性にもその影響が表れていった為、次第に当時の音楽業界から干されていきます。

そんな長年蓄積された、社会の理不尽さへの不満、怒り、悲しみ。そして、自分の力で自由な世界を勝ち取る喜びが、この歌の背後にある事を知らずにこの曲は理解できません。

そして極め付けは、後半のスキャットの部分。いや、あれはスキャットという枠にはまらない、彼女の叫びです。あれは彼女にしか歌えません。

まるでアフリカの少数民族の祭りか何かで聞いたことのある様な音階と声。それが最後に見事にブルースに着地しています。

まさに彼女のアフリカン・アメリカンとしてのルーツをはっきりと宣言しているように聴こえてなりません。

原曲が発表されたミュージカルでは、どのようなシーンで脇役の黒人男性に歌われていたか不明ですが、階級社会を描いた物語から推測するに、重なる部分があるに違いありません。

また、その後マイケル・ブーブレやmuseがどのような解釈でこの歌を歌ったか分かりませんが、不自由な過去から這い上がって、新しい自由な世界を自分の手で勝ち取るんだという強いメッセージは、共通のものだと思います。

きっと車のCMも、画期的な新製品で新しい夜明けがくる、と言いたいのでしょうね。

私がこの曲を歌う時、他の曲にはない緊張感を覚えます。それは背後にあるストーリーが、自分の生きてきた人生とは比較にならない程重たいものであり、私がそれを歌う資格があるのか?という気持ちにさいなまれるからです。

この様な経験は他の曲ではありません。

ですが僭越ながら、私の人生の私の経験に置き換えて、自分の歌としてこれからもこの曲を歌わせてもらおうと思います。私の歌をきっかけに、この曲のメッセージや、ニーナ・シモンの生涯に興味を持ってくれる人がほんの少しでも増えることを願って。

 

まとめ

以上が、私なりに考えるこの曲の和訳と解釈です。歌詞の内容を知る前と知った後では、まったく違う曲に聞こえてくるのではないでしょうか?

ダイナミックで、クールで、スタイリッシュ?私も調べる前はこの曲をそんな風に思っていました。

いやいや、そんな上っ面のかっこよい曲ではないのですよ(笑)

もっともっと心の奥深いところから感情が吐き出される、ドロドロした人間臭い曲です。

でもただ重たいのではなく、怒り、恨みの後には希望を感じさせてくれる、救いのある曲です。

だからこそ多くの人々の心をとらえ、現在も、これからも名曲として多くのミュージシャンにカバーされていくことでしょう。

そして、あなたがこの曲が気になったのは、決して偶然ではないはず。

現状に不満を持っていたり、既存の世界を打破して新しい世界を築きたい、という気持ちがどこかにあるのではないでしょうか?

この記事が、少しでもそんなあなたの力になれればうれしいです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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